バックキャスト:相場に負けない野菜を作ることによって日本の農家を稼いでもらい守る
次は、バックキャストというキーワードについて聞いていきます。九州力作野菜・果物プロジェクトの取り組みの中で、未来がこうなったらいいなということを掲げながらやってたりしてますか?
これは、偏愛っていうのとちょっと重なるかもしれないけど、農家の方の儲けをまず増やしたいと思ってるんです。 もうお金持ちになれないと若い人がね、「これは農家は大変や」ということで、続かなくなってしまいます。 今、農家の方の平均年齢は67歳で、どんどん上がっているんですよ。
改めて、聞くと67歳が平均年齢ってすごいですね。
67歳が平均ということは、もうおっちゃんが一生懸命農家をしてるわけです。 なぜ農家の方が人気がないのかって言ったら、不安定だし、年収も低いからです。農家は、産業の中でもかなり低い水準で、400万円に届かないぐらいだと思いますよ。
本来、人間の生命に関わってくる日本の食品自給率を担っているという割には農家の方が儲かっていない。 それはなぜかというと、相場によって価格が決まるので、農家の方が値段を付けられないからなんです。
相場っていうのは、例えば、農家をやってた方は分かるかもしれませんが、相場が高い時は、商品自体の品質は良くないんですよね。でも、相場が安い時は商品自体はしっかりしてるし…。 しっかりしている良い商品を栽培しても、相場安によってキャベツ1玉58円になる場合もあります。つまり、需要と供給がマッチしないんですね。 せっかく良いものを作っても高く売れないという普通では考えられない状況なんです。
気候などに恵まれると品質の良いものができるけど、流通量が多くなって相場的には安くなるということですかね。 他の産業だったらなかなか考えられない状況かもしれないですね。
例えば、車だったらいい機能がついていたら高くなるじゃないですか。 野菜はそうじゃなくて、完全に相場で動いてるので、本人が一生懸命良いやつを作っても、相場によって決められる、ということでなかなか厳しいですよね。
そこで、農家の方が儲けるためにはどうすればいいのか、相場に勝つためにどうすればいいのか、っていうのを僕たちはまず考えました。 その結果、相場に勝つようなブランドを作ったらどうかっていうのが根底に生まれたんですよね。 バックなんかもブランド名が書いてあるだけで素晴らしいもののように感じるじゃないですか?
だから、野菜でも、そのブランドを作ろうとしたんです。 野菜におけるブランドって一体何なのかって考えた時に、果物は糖度表示というのがあって美味しさっていうのがわかるんですけど、野菜のおいしさっていうのはなかなか見えないですよね。 例えば、この大根は糖度があるからもっと高く売れとかいうことが難しいんですよ。
確かに、野菜によっては糖度があっても選ばないかもしれません。
野菜の中でも、トマト、さつまいも、かぼちゃなどは、糖度によってブランド化していくことができるんですけど、他の野菜は、ほとんどないですよね。
あとは、野菜に関しては価格訴求に使われることが多いですよね。 価格訴求っていうのは、要は、客寄せとしてしか使ってないというかね、たとえば、「キャベツ1玉58円です」とか、「キュウリ1本19円です」とか、みんなそれを見かけて買うという客寄せの役割になってるんですよね。
なるほど…。 このスーパーでは野菜が安いからいこう!っていうのは、よく聞く話な気がします。
はい、そういう現状を野菜のおいしさでどうにかできないのかという中で、「これは力作だから美味しさにこだわっています」と伝えて、美味しさの価値もプラスしながら環境に負荷を与えていないっていうのをブランド化していきたいんです。 市場に流通させるのではなく、産地と契約することによって、相場に負けるというのを打破して、力作野菜だから環境にも優しい栽培で、美味しさにこだわっているという事で、手に取ってもらえるようにブランド化して、相場と関係なく安定的に売れていくということを目指しているんですよね。
素晴らしい取り組みですね。 ブランド化をすることによって、日本の野菜が相場に負けてしまうという農業におけるボトルネックとなるような課題解決に挑んでいるということですね。このような取り組みは、結果的に、日本の農家を守っていき、人口増加などによって食糧危機などが起きてしまった時の対応策にもなりそうです。